革靴の基本といえば、やはり「ストレートチップ」。
革靴に詳しくない方でも、何となくイメージできる「つま先に一本線が入ってる」アレです。

意外とTPOが厳しい革靴界隈。その中でストレートチップは、冠婚葬祭からビジネスまで万能にカバーできるため、“革靴初心者が、最初に買うべき革靴”と言われるほど、鉄板の存在です。
しかし、ストレートチップとひと口に言っても、実は「色々なバリエーション」があることをご存知ですか?
今回の記事では、革靴の基本であるストレートチップにフォーカスして、基本知識やバリエーション、おすすめシューズなどを徹底解説していきます。
「ベルトのついたストレートチップが売ってるけど、これ本当にストレートチップ?」
「結婚式で穴飾りがあるタイプを見かけたけど、あれは・・・?」
「万能って聞くけど、Tシャツに合わせるのもOK?」
そんな疑問をお持ちの方のお手伝いが出来れば幸いです。
CONTENTS
ストレートチップとは?
ではまず初めに、ストレートチップの基本知識をおさえていきましょう。
つま先に横のラインが入った、革靴デザインの“総称”
「ストレートチップ」とは、革靴のつま先に「一本の直線」が入ったデザインの総称です。「一文字(いちもんじ)」という名称で呼ばれることもありますね。

ここでポイントなのが、ストレートチップとは、革靴のデザインそのものではなく、革靴のつま先のデザインを指している言葉だということ。
つま先に「一本の直線」が入っている革靴は、どれもストレートチップなのです。
革靴にはストレートチップ以外にも、「プレーントゥ」や「ウイングチップ」、「Uチップ」といった種類がありますが、いずれもあくまで「つま先」のデザインを指す言葉なんです。

必ずしもストレートチップ=フォーマル、ではない

ストレートチップ=あらゆるシーンで着用できる革靴。
……というイメージがありますが、ストレートチップは、あくまでも“つま先のデザイン”であることを考えると、他の要素も考慮しないといけませんね。
他とはズバリ「足の甲デザイン」や「装飾」のこと。
まずはストレートチップと「足の甲デザイン」の組み合わせから見ていきましょう。
ストレートチップと「足の甲デザイン」の組み合わせ
ストレートチップと組み合わせられることが多い足の甲デザインは、主に3種類。
- 内羽根(バルモラル)
- 外羽根(ブラッチャー)
- モンクストラップ
です。
1つずつおさえていきましょう。
【安心と伝統の万能さ】ストレートチップ × 内羽根(バルモラル)
ストレートチップのつま先と、内羽根を合わせたタイプです。

内羽根とは、19世紀イギリスのバルモラル城でデザインされた宮廷靴に由来する、靴ひも周りの仕様のこと。
ビジネスシーンから冠婚葬祭まで着用できる万能の革靴は、この組み合わせです。

万能な革靴ではありますが、フォーマル感が強いため、休日のカジュアルコーデの足元を任せるのは止めておいた方がいいかもしれません(NGではないけど、雰囲気が固くなり過ぎるかも)。
【実はミリタリー出身】ストレートチップ × 外羽根(ブラッチャー)
ストレートチップのつま先と、外羽根を合わせたタイプです。

外羽根とは、19世紀にプロシア陸軍を率いていたブルーチャー将軍が軍用靴に採用したことが由来とされる、靴ひも周りの仕様です。
ミリタリー出身であるため、外羽根を採用した革靴=カジュアルではあるのですが、ストレートチップとの組み合わせなら、内羽根と同じように幅広いシーンで着用できます。

結婚式でもNGではありませんが、主催者側やスピーチを任された立場であるならば、避けておいたほうが無難かもしれません。
【実に個性的】ストレートチップ × モンクストラップ
ストレートチップと、ベルト&金属バックルを合わせたタイプです。

実はつま先のデザインだけを指す言葉だけど、革靴全体を指す言葉として使われることも多い「ストレートチップ」。
実は足の甲デザインだけを指す言葉だけど、革靴全体を指す言葉として使われることも多い「モンクストラップ」。
この2つがブッキングする組み合わせなので、慣れていないと「…ん? これはストレートチップなの?」と混乱してしまいますね。
金属パーツがあることで非常にエレガントな雰囲気を演出してくれます。
結婚式では履くこともできますが、葬祭ではNG。金属パーツの存在が葬祭のTPOに引っかかってしまいます。
ブローグやギンピングといった「装飾」
革靴のデザインを構成する要素にはもう1つ、「装飾」があります。
一部、マニアックな部分もありますが、重要なポイントなので是非、おさえてくださいね。
元々は水はけを良くするための機能穴「ブローグ」
パンチングで開けられた大小の穴飾りは「ブローグ」と呼ばれます。

ストレートチップにブローグを加えたものは、ブローグの多さに応じて
- パンチドキャップトゥ
- クォーターブローグ
- ハーフブローグ
という具合に段階的に呼び方が変わっていきます。

今でこそ装飾として用いられていますが、元々は、靴の水はけを良くする機能穴として重宝されていました。
そのため華やかな印象になるのですが、増えれば増えるほどカジュアルになるため、結婚式で着用できるのは、パンチドキャップトゥまでとされています(葬祭にブローグはそもそもNG)。
華やかな雰囲気をプラスする「ギンピング」
革の端っこを、意図的にギザギザに仕上げたものは「ギンピング」と呼ばれます。
ギンピングの有無で、結婚式で履けるデザインが履けなくなるようなフォーマルさの変動はありません。
ただ、マニアックな要素であるだけに「ギンピングがあるものを選ぶ=それ相応の意思表示」になるため、葬祭の席に履いていくのは、ちょっと攻めすぎで気が引ける……という塩梅です。
こだわりたくなったら上級者の証「ステッチ」
革靴は、裁断された複数の革を縫い合わせて立体的な構造を作り上げます。この縫い目にもいくつかのバリエーションがあります。縫い目が1列は「シングルステッチ」。縫い目が3列は「トリプルステッチ」。縫い目が見えない仕上がりは「レベルソ仕上げ」と言われます。
迷ったら、内羽根ストレートチップの黒を買っとこう
ストレートチップの基礎知識をおさえた今、改めて「初心者が迷った時に買うべき革靴」を考えるならば……
それは「ストレートチップ」ではなく「ストレートチップの内羽根で、余計な装飾がない」という要素を組み合わせた「内羽根ストレートチップ(黒)」になることをご理解頂けると思います。

基本的に、靴屋さんで「結婚式 or お葬式で履く」という旨を伝えれば、この内羽根ストレートチップ黒を紹介されるとは思いますが、革靴要素の組み合わせは他の革靴にも応用できるのでしっかり覚えておいてくださいね。
ストレートチップのおすすめブランド・モデル10選
さて、ストレートチップに対する認識の解像度をあげたところで、おすすめのストレートチップを紹介します。
実際に購入するときの参考にしてみてくださいね。
※掲載している価格などの情報は、2020年8月18日時点でのものとなります。
日本製革靴の王道・リーガルの入門モデル

履き始めてすぐに柔らかい履き心地を楽しめるマッケイ製法で仕立てられた一足です。本来の革靴はグッドイヤーウェルト製法で「履くほどに足に馴染んでくる」のが醍醐味ですが、いきなり革靴を育てるのはハードルが高いと感じる革靴初心者にはピッタリのモデルです。
足の甲デザイン | 内羽根 |
装飾 | シングルステッチ |
ブランド名 | リーガル(REGAL) |
神戸発シューズブランドのスタイリッシュなロングトゥモデル

細身でロングノーズ(ロングトゥ)なシルエットが特徴。ヒールの一部だけ色を変えることでドレス感を落としつつ、ジャケパンスタイルとも相性◎なよう仕上げられています。
足の甲デザイン | モンクストラップ(ダブルモンク) |
装飾 | シングルステッチ(つま先のみレベルソ仕上げ) |
ブランド名 | バンプアンドグラインド(Bump N’ GRIND) |
皇室御用達シューズメーカーが仕立てる、王道革靴

「日本人の足」を半世紀以上も追及してきたノウハウが存分に投入されていて、高クオリティの履き心地を体験できます。
価格を比較的低く抑えられるセメンテッド製法を採用したモデルなので、大塚製靴の入門モデルとして如何でしょうか。
足の甲デザイン | 内羽根 |
装飾 | ダブルステッチ |
ブランド名 | オーツカ M-5 |
雨を弾いて、足蒸れを防ぐリーガルのゴアテックスモデル

アッパー(足の甲を包む部分)内側にGORE-TEXを採用することで、足ムレを防ぎつつ、水滴(雨)の侵入を防ぐという履き心地に仕上がっています。
革靴の天敵ともいえる雨を克服したモデル。天候に普段の革靴ライフを左右されたくない紳士の方へオススメです。
足の甲デザイン | 外羽根 |
装飾 | クォーターブローグ |
ブランド名 | リーガル(REGAL) |
革靴とスニーカーの履き心地のハイブリッドシューズ

革靴の外見にスニーカーの履き心地(靴底)を融合させた人気&定番のモデルです。
靴底が少々分厚いため、冠婚葬祭や重大な会議といったシーンには不向きですが、普段のビジネスシーンでは抜群のコスパを発揮してくれますよ。
足の甲デザイン | 内羽根 |
装飾 | クォーターブローグ、シングルステッチ |
ブランド名 | テクシーリュクス(texcy luxe) |
お手軽価格で王道ストレートチップを揃えたい方へ

合成皮革などを採用することでコストを抑え、1足約3,000円というお手軽価格で革靴を販売しています。
合成皮革を採用しているため、ここぞというときの勝負靴としては頼りないのですが、普段のビジネスシーンやカジュアルシーンに合わせる一足を気軽に増やしたい人にはうってつけと言えますね。
足の甲デザイン | 内羽根、外羽根、モンクストラップ |
装飾 | シングルステッチ |
ブランド名 | MM/ONE – エムエムワン – |
つま先のラインを斜めに構えたお洒落顔

一般的なストレートチップと違って、革と革の間にすき間があり、その下の革が顔を覗かせているレイヤード構造に仕上げられているのが特徴です。
冠婚葬祭で着用するにはデザイン性が強いため、普段のビジネスシーンでちょっとお洒落をしてみたいときに採り入れてみて下さいね。
足の甲デザイン | 外羽根 |
装飾 | シングルステッチ |
ブランド名 | – |
世界で一番革靴のノウハウを持つ英国シューズブランドの定番モデル

かつて様々なシューズブランドのOEM生産を担当していた時期にノウハウを積み上げ、今や世界で一番革靴のノウハウを持っていると言われるほどまで上り詰めました。
紹介するモデルはノリッチ(NORWICH)。直線的なステッチをあえて採用するなど、真面目な印象に仕上げられたディテールは、合理的なイギリス靴らしさを醸し出しています。
足の甲デザイン | 外羽根 |
装飾 | ダブルステッチ |
ブランド名 | クロケット&ジョーンズ(Crockett&Jones) |
側面だけをブローグで飾る変わり者

一般的なクォーターブローグと比べると装飾性が薄れるため、このデザインなら結婚式で着用しても大丈夫でしょう。
つま先のブローグほど目立たないため、「こっそりとお洒落を楽しみたい」ときにオススメなモデルです。
足の甲デザイン | 内羽根 |
装飾 | 特殊クォーターブローグ(側面のみ)、シングルステッチ |
ブランド名 | – |
唯一無二の「変幻自在の器用さ」で仕立てられたイタリアのストレートチップ

履くほどに足に馴染んでくるグッドイヤーウェルト製法で仕立てられた本格革靴。ソールの交換も可能なので、大切に履けば何十年単位で付き合うこともできます。
ハンドメイドでヴィンテージ加工を施され、非常に深みのある表情に仕上がっています。
足の甲デザイン | ダブルモンクストラップ |
装飾 | シングルステッチ(つま先のみレベルソ仕上げ) |
ブランド名 | サントーニ(Santoni) |
あとがき
以上、ストレートチップの基本知識とバリエーション、おすすめシューズを解説しました。
参考になりましたでしょうか?
最終的な革靴のデザインは「つま先」と「足の甲」、「色や装飾」の組み合わせで様々なバリエーションに分岐します。
革靴に慣れない内は「内羽根ストレートチップの黒」という大枠で。
革靴に慣れてきたら解像度を上げて、「つま先」や「足の甲」といった要素別に捉えるようにして、より自分の理想に近いデザインを探すようにしてみてくださいね。
以上、『紳士のシャツ』編集部の玄木がお送りしました。
ではでは。